南雲吉則先生といえば、現場医師として不摂生の極みを尽くし30代にして不健康まっしぐら医師の完成形になった人。
それが健康に目覚めて60代になったいま、30歳当時よりもはるかに若々しい姿を披露している。
そんな奇跡の若返り健康法を求めて、この本を手にとった人も多いだろう。私もその一人である。
この本をざーっと読み通して感じた結論は、これは「南雲先生のようになりたい人が読む本」であり、「自分の生活をうまく改善して健康になりたい人が読む本ではない」ということだ。
全体構成は、
- 家をきれいにする
- 肌をきれいにする
- 体型をきれいにする
- 腸をきれいにする
な具合で、南雲先生が実践している様々なトライを紹介している。
「家をきれいにする」は精神的な部分が強く、これをやったから見た目に影響するほどのものはないと感じた。(ので、私は読んでない)
「家をきれいにする」っていうのは、部活動でいうところの「一流の選手は道具を大切にする」とか、ビジネス書で言うところの「デキないビジネスマンは挨拶ができない」みたいなものと一緒なので、耳タコである。
また肌〜腸に関しての実践ついて、基本的な内容は
- 洗剤に入っている「ラルリル硫酸塩」などの物質が入ったものを使うな
- 精製糖質をとるな
- 体につかう「洗剤」はすべて「せっけん」にしろ
- えごま油(オメガ3)を摂れ
- 発酵食品を摂れ
- きのこやごぼうの食物繊維を摂れ
- 筋トレをしろ
これに集約される。これ以上のことは何も言っていない。
ここまで書けばだいたいの人はわかると思うけど、ようは「意識が高い生活習慣」の本である。
健康意識が高い人ならば、精製糖質がヤバいことも筋トレが有用なことも、食物繊維が大切なことも、全部すでに知っている。
けどそれを実践できる人が少ない理由はなぜか?
その生活に自分を追い込めないからだ。
糖質まみれで堕落しきった自分の生活を維持するのか、はたまた自分の思い描く最高に意識の高い生活へ変革するのか。
これを天秤にかけたときに、多くの人が前者を選択しているだけのことに過ぎない。
だから「南雲先生の人のようになりたい人のための本」である。
南雲先生のファンが、少しでも本人に近づくことをモチベーションとして生活改善を試みるための本である。
書いてあるの多くは、そのへんの健康礼賛本と遜色がない。
ちょっと変わっている意見としては「ボディソープやシャンプー、コンディショナーはすべて全て悪だからせっけんに変えろ」くらいのものか。
極めつけは「歯磨き剤」までもせっけんにしろといっている。
最初は髪の毛がキシキシいうらしいが10日もすれば、自分自身の皮脂がしっかりコーティングしてくれるので、キシキシしなくなるらしい。
シャンプー→トリートメント→コンディショナーという流れや、風呂上がりの化粧水→美容液→保湿液という流れも、もともとシャンプー剤が皮脂を落としすぎるからやってる、マッチポンプ的な手法らしい。
とはいえ、南雲先生自身がおっしゃるとおり「人間は現状維持を望む生き物」であるから、私自身もヘアケアやスキンケアの現状を変えてせっけんに挑む勇気はない。
せっけんに関しては非常に気になるので、誰か試してほしいところである。自分では怖くて試せない。
そうしたチャレンジが増えて、「お、これは効果があるぞ!」となっていけば、もしかしたら数年後には、シャンプーやボディソープの勢力図がせっけん一色に変わることもありうるかもしれない。
そんなこともちょっと考えてしまった。
以前、糖質の一切を絶ち、脂質のみで生活するという「ガチ糖質カットの脂ダイエット」の本を読んだが、あれもなかなかエキセントリックな試みだった。
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「これをやれば人生が変わる!」と言われても、「いや、そこまでしなきゃいけないなら今のままでいいです…」と引いてしまう感じは同じだと思った。
「人は現状維持を好む生き物である」という学びを、ことさら強化された読書体験でした。おわり。