みなさんこんにちは、木偶の坊です。
今回は2020年5月に発売されたこちらの本の書評を書きたいと思います。
ビジネス界、IT界でその名をとどろかせている堀江貴文さん。
ITを通して「近未来を予測する」という能力に長けた堀江さんは、いったいどのような景色をみているのだろう。
堀江さんが発信するメルマガやYouTubeチャンネル、講演会などでは様々な質問が飛び交うが、その多くは「堀江さんしか知りえない情報や見通し」を期待するものだ。
しかし「そんなものはない」と堀江さんは断言する。
堀江さんしか知らないインサイダー情報なんてないし、堀江さんしかしらないホットなベンチャーなんてない。
堀江さんはスマホを使うことで有益な情報を得て、統合して、アウトプットするという。しかしそこにも「堀江さんしか知らないスマホ活用術」というものは存在しないという。
普通の人と同じようにiPhoneを使っている堀江さんが、いかにしてスマホを活用して人生を豊かにする努力をしているか。そしてスマホを通して世界を見ているかの一端を知ることができる本である。
概略
この本の中身を抽出するとこんな感じ
- スマホはパソコン以上の携帯万能ツール スマホで何でもできる
- インターネットはスマホを使って簡単に稼げるマーケット
- スマホはその人の価値観を決める情報源 フィルターを活用せよ
- 仕事で稼ぐのではなく遊んで稼ぐ
- ビジネスの価値は金ではなくて行動力
それぞれについて大まかに見ていこう
スマホはパソコン以上の万能ツール
堀江さんはパソコンをもう使っていないらしい。
IT界の申し子と名を馳せた人の行動とは思えないが、パソコンでできることは全てスマホでできると堀江さんは豪語する。
動画撮影も、動画編集も、写真加工も、プレゼンも、資料作成も、ブログ執筆も、投資売買も。
これまでPCでやっていた作業はすべてスマホのアプリに落とし込まれ、より快適に、より安定に動作するUNIX環境で操作できるようになった。
本を書くのもメルマガ記事を書くのも、iPhoneのフリック入力でやっているそうだ。その徹底ぶりに驚いた。
言われてみれば自分が日々パソコンでやっていることで、パソコンじゃないとできないことというのは存在しない。
パソコンの方が快適にできることは多いけれど、パソコンじゃないと絶対にできないということは、確かにない。いまこの記事を書いているのはPCだが、スマホでできないことはもちろんない。
唯一挙げるならば、YouTube動画をイメージ通りに編集することはできなさそうだが、簡素な編集ならスマホアプリで十分にできる。
堀江さんはパソコンでないとできない仕事を「減らす」ことでスマホだけで仕事ができる環境を整えている。身体とスマホだけですべてが完結するならば、これほど効率のよい仕事スタイルはないだろう。
スマホはあらゆるジャンルの作業をアプリという追加型のソフトウェアで可能にできる。
工具箱にそれぞれの作業に最適化された工具を足していくイメージだが、工具と違って重量が増さない。いくら加えてもスマホ自体が膨らまないから、かさばらない。
名前に「電話」を冠するiPhoneだが、電話機能というのはiPhoneのもつほんの1機能に過ぎず、実質的にはUNIXのPCなのである。
この点を指して「スマホは身体拡張のツールである」と堀江さんは指摘する。
いかにここに機能を盛り込んで作業を最適化していくか、という工夫が大切だと説く。課金ゲームやサイト閲覧、SNS上の馴れ合いだけに使うのはスマホのよさをスポイル(台無しに)する行為だ。
そしてこのスマホ1台あれば、インターネットという超大型のマーケットでお金を稼ぐのは超容易なのだという。
スマホを使えばインターネットで簡単に稼げる
「スマホをもつことは、有能な部下を複数もつこと」だと堀江さんは言う。
これまで人間がやっていた多くの仕事はスマホで簡単に、かつ一瞬で終えられる。
翻訳・計算・設計・議事まとめ…。たしかに言われてみればどれもかつては人がやっていたことだ。
それらの業務はスマホのアプリで手元で簡単に処理することができる。
そして日本という「カネ余りの国」において、そうした有能な部下を引き連れ、自らのもつ経験や価値をうまく使えば、お金持ちから金を抜き取ることは簡単なことだという。
「お金ががないからビジネスをはじめられない」という人を、堀江さんはいつもコテンパンに言いつぶしている。
これは本書の内容ではなくて、堀江さんのYouTubeチャンネルでの言葉だったが
「人の経験って換金率がすごく悪い。経験やその人の価値を一度お金になおそうとするからお金に困る。経験をそのままマーケットで使えばいい」
こんな感じのことを言っていたと思う。
ようは、人を雇ったり資材を整えたりするのがビジネスの本質なのではなくて、価値を売るということが本質だということだ。
ただありふれた才などそこらじゅうに掃いて捨てるほどあるし、スキル1つだけでは上を見ればきりがない。だから1つの価値では勝負ができない。
そこで堀江さんが大切にしているのは「価値のかけわせ」だ。
既存からある価値 × 自分の価値
詳しくは以前キングコングの西野さんと対談している動画がどっかにあったからそちらを観てもらいたい。
つまり、需要があることに自分ができることを掛け合わせて、他の人にはできない価値を生み出していくということだ。それができれば、その価値に投資をするという人から金を得てビジネスが成立する。
しかしそのためには、何が社会に求められているのか、どんな価値があるのか、を知らないといけない。
そんな情報収集についても、スマホを使えば簡単だと堀江さんは続ける。
スマホはその人の価値を決める情報源
いまやスマホを使えば、世界で起きていることも、世界で流行っていることも、世界で求められていることも、簡単に知れてしまう。
しかしそれは同時に情報の氾濫も意味している。
TwitterやFacebook、Instagram。SNSから流入してくる玉石混交の土石流のような情報。
各種ニュースサイトから入ってくる、厳選されていない料理もされていない食材の山。
それを前に呆然とするならまだしも、多くの人はそれに気づかずただただ情報に流されているという。どんな情報をピックアップするかという指針をもっていないと、あっという間に情報に溺れてしまい、自分を見失うことになる。
人というのは自分が思っている以上にスマホから入る情報に依存して、自分というものができていると堀江さんは言うのだ。
政治的な話が分かりやすいと思うが、右翼的な情報ソースが多いスマホを見ていれば右翼的に、左翼的な情報ソースが多ければ左翼的に思想が偏る。
思想が情報を選択しているのではなくて、情報をもとに思想が構築されていくのだ。
そう考えるとよりよいマインドを持つためには、どこから情報を得てくるかということが何より重要になる。
慣れない人が情報の津波にあらがえるはずもないので、有識者や言論人が発信している「情報を咀嚼した意見」を通してみることで、より洗練したクリアな情報収集ができるというのだ。こうした信用した筋が発信する情報から学ぶことを、ソーシャルフィルタリングという。
堀江さんが観ている景色が見たければ、堀江さんと同じ情報ソースにすればいいということだ。例えば堀江さんのTwitterフォローのリストを同期すればいいだろう。他には中島聡さんや藤沢数希さんのメルマガを購読しているらしい。
よりよい発想や価値を生み出していくためには、情報源から変えていくことが重要だ。
まずはそこからはじめていくのがいいだろう。
仕事で稼ぐのではなく遊びで稼ぐ
堀江さんは仕事と遊びの境界線をなくしていて、遊んでいるように仕事をしている。すべての仕事が遊びの延長にあるから、どんだけ忙しくしていても全く苦でないという。
サラリーをもらって働いている私たちとは、仕事に対する考え方が全く違うのである。
やりたくないことも給料のために我慢する。
嫌な人間関係もあるけれど仕事のためだからと受け入れる。
それらはすべて時代遅れだと堀江さんは一蹴する。しかも今後は雇用自体がなくなるかもしれないとすら指摘する。
好きなことというのは、モチベーションをもって取り組むことができる。
その最たる例が遊びだ。遊びは言われてやっているわけでもなく、ましてや給料がもらえるからやっているわけではない。それでも人は遊びに夢中になれる。
それはその人がその遊びが好きだからに他ならない。
だったらその遊びこそがその人の価値であり、それを使ってビジネスをしないというのはもったいないことだというのだ。
でもアイドルが好きなこととか、ゲームが好きなこととか、そんなことでビジネスになるのか、と懐疑的な人は多い。
それこそ盲点で、その好きなことを使っていかにビジネスにしていくかという発想こそが、前段でも指摘していた「価値×価値」だ。
ハードルが低いことでいえば、ブログにして情報を発信してもいいだろう。ゲームやアイドルに関するYouTube動画を作成してもいいだろう。まずはアウトプットをしなければ何も始まらない。
ただ、それだけではありふれている価値なのでそこに自分らしさの価値をかけあわせて、唯一無二の価値を生み出せれば、それは立派なビジネスとなりお金を稼げるという。まさに目からうろこである。
でもそんなビジネスマインドがない、という人は情報ソースを変えるべきだ。何が求められているのかを知るためには、自分に入ってくる情報の本流を精選していく必要がある。
すべての話がつながっていたのだ。これがこの本の面白いところだ。
ビジネスの価値は行動力
お金がありません。コネがありません。人脈がありません。
ビジネスをはじめられない人がよく使う言葉である。
しかしこれらは本当に必要なのだろうか? そして、それらを得るために手軽にはじめられることは何もないのだろうか?
お金よりも、人脈よりも、そして価値よりも何よりも、なくて困るのは行動力なのだという。
逆に言えばこれらのものがなくても、行動力さえあればビジネスははじめられるという。
世間で思われている以上に、「とりあえず来てみました!」という勢いだけの人間の需要は高いという。
多くの人は「できっこない」と理由をつけてそれを押さえつけている。チャレンジをしているわけでもないのに、何が無理なのか。
できっこないという言葉は、その人の自己肯定感をつぶす悪魔の言葉だ。
好きなことをビジネスにできないのも、「どうせできっこない」が裏に隠れている。
そんなの無理に決まっていると決めつけてしまっている。
大切なことは行動力。
これまでのすべての話はここに集約される。
スマホをつかうのも、インターネットで稼ぐのも、情報をフィルタリングするのも、遊びをビジネスにするのも、すべては行動から始まり、行動で推し進めて、行動が結果を生む。
道具も市場も情報もそろった。背中も押してあげた。
あとはあなたがやるだけだ。
この本はそんなやさしさに満ちた本だと感じた。
スマホを使っておおいなる可能性の海に出ていける。
若者たちにこそ響く良書であると私は感じた。
ぜひ、これからを生きる