先日の総務省の発表により、今後eSIMが拡大の方向へかじ取りすることが明らかになりました。
しかしSIMカードやら格安SIMやらと、SIMと名のつく言葉もわかりづらい中で、また新たにeSIMと言われて困ってしまっている方も多いのではないかと思います。
- そもそもeSIMって何?
- eSIMで何かお得になるの?
- 利用するために必要な条件はあるの?
こんな疑問をもっている人も多いでしょう。
この記事ではそういったeSIMについての疑問が解消するため、基礎の基礎から解説していこうと思います。
この記事を読むことで以下のことが理解できます。
この記事で解消できる疑問
- eSIMとはなにか?
- 現在のeSIMの状況と今後の展望は?
- eSIMを使うメリット、デメリットは何か?
- eSIMを使うために必要な準備と方法は?
- 自分はeSIMは使うべきか?
ぜひ、最後まで読んでいっていただければと思います。
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そもそもeSIMとはなにか?
eSIMとは、一言で言えば電子化されたSIMカードのことです。
皆さんがスマートフォンや携帯電話を使う際には、スマホにSIMカードを挿し入れて使っていますよね?
実はスマートフォン単体では通信を行うことはできず、SIMカードを挿すことで「インターネット通信ができる」状態になります。
つまりSIMカードとは、契約している通信会社の通信を受け取るために必要な「設定情報」が書き込まれたカードです。
スマホにSIMカードを挿すことで、スマホが「あ、Docomoの電波をキャッチすればいいんだな」と理解して、通信に必要な認証を行ってくれるということです。これはauやソフトバンク、他の通信事業者でも同じです。
eSIMとはこのSIMカードの果たしている役割を「電子化」したもので、カードとしての実態は持たず、スマートフォン内での設定によって代替する操作のことをいいます。
eSIMを使う4つのメリット
メリット1 2つの通信回線を1つのスマートフォンで利用ができる
eSIMを使う一番のメリットは、1つの端末で2つの回線を利用できることにあります。
iPhoneX以降のiPhoneシリーズでは、SIMカードを挿入したデータ通信認証とは別に、eSIMを利用したデータ通信認証を行うことができます。
つまり物理的なカードであるSIMカードとは別の通信会社のeSIMを登録すれば、1つのiPhoneで2つの通信会社の通信を利用することができます。
2つの通信を利用すると、1つの通信会社を電話用に、もう1つをデータ用にという使い分けができます。
もちろん、2つのSIMカードの電話を両方使うこともできます。
この機能をDSDS(Dual SIM Dual Stanby)やDSDV(Dual SIM Dual Volte)などといいます
メリット2 2つの回線を使い分けることで、高品質の電話と大容量データ通信を低コストで維持できる
2つの回線を使い分けるとどんなメリットがあるかというと、電話とデータ通信のそれぞれに適した会社と契約して『いいとこどり』ができるということです。
例えば電話通信網が安定している大手キャリア(ドコモ・au・ソフトバンク)を電話用にして物理的なSIMカードを挿します。これで日本中どこにいても良好に電話がつながるようになります。
しかし大手キャリアの弱点はデータ通信量が高いこと。そこで、データ容量無制限の楽天アンリミットのeSIMを契約してiPhoneに登録します。
※注 データ容量無制限は楽天エリア内に限ります
こうすることで、ドコモ・au・ソフトバンクの高品質な電話回線を維持しながら、楽天でデータ容量を気にせず使い倒すことができます。もちろんテザリングで他のタブレットやPCなども接続することが可能です。
大手キャリアは電話だけができる最低限のプランで使えばいいので大幅な節約になります。
このように2つの通信会社の使い分けで、自分に合った通信状態をつくりあげることができます。
メリット3 eSIMにすると、SIMカードの差し入れをしなくても済む
今皆さんが使っているスマートフォンにはSIMカードが刺さっていると思いますが、例えば携帯会社を変更したり機種変更をする際には新しいSIMカードに入れ替える必要があります。
例えばDOCOMOからauに通信会社を変更する際には、DOCOMOを解約してスマホ内のSIMカードを破棄して、auから届くSIMカードを新たに挿し入れるという手順になります。
しかしこの場合、新しくauのSIMカードが届くまでの間は通信の認証ができず、通信ができなくなります。
eSIMであれば、wi-fi環境があればその場でSIM情報の登録ができるので、物理的なカードが届くまで待つことをしなくて済みます。
メリット4 海外旅行時に現地の通信会社を手軽に利用できる
実はeSIMの分野では日本は遅れていて、世界の先進各国ではeSIMが普及しつつあります。
海外旅行時に現地に着いてからネットを使いたければ、これまではキャリアの高額な国際ローミングサービスを使う必要がありました。
国際ローミングとは、日本の通信事業者のSIMカードを挿しっぱなしでも、その会社が提携している通信事業者の通信をキャッチできるサービスです。
現地の通信事業者のSIMカードを現地で調達するのは初心者にはハードルが高いので、これまでは取れる選択肢がそもそも少ないのが実態でした。
しかしeSIMの拡充が進んでいる国であれば、現地の通信事業素やのeSIMを利用することで、スマホ上での設定だけで安い通信をキャッチすることができるようになります。
とはいえ、この海外eSIM自体も結構ハードルが高い行為です。
海外旅行によく行く人で通信をもっと格安で便利に使いたいなぁという人は、海外のローミングを格安で使える、楽天UNLIMITで契約をしておくのをオススメします。
eSIMのもつ4つのデメリット
デメリット1 eSIMは物理SIMと違って気軽につけ外しができない
通信会社を変更するときに、SIMカードが届くまでのタイムラグがないのがeSIMのメリットでした。
しかし逆に言えば、SIMカードを抜き差しするだけで通信会社を変更できるというのが、物理SIMカードのメリットです。
eSIMを機能させるためには「設定」が必要になるため、気軽さは物理SIMに劣るというデメリットがあります。
一度登録したらしばらく変更しないという人はいいですが、こまめに通信事業者を切り替えるという人にとっては手間が増えることになります。
デメリット2 eSIMの設定にはWi-Fi環境が必要
eSIMは登録手続きをすることで、はじめてスマホに通信会社を認証させることができます。
この認証作業をしないとスマホはネットワーク通信をキャッチできないため、設定をするにはwi-fi環境が必要になります。
物理SIMカードであれば挿すだけでOKだった(一部はAPN設定が必要)のに、eSIMではひと手間かかってしまうのはデメリットになります。
デメリット3 eSIMの使える通信事業者は少ない
まだまだサービスが始まったばかりのeSIM、使える事業者が少ないのがネックです。
現状では楽天アンリミットとIIJ(アイアイジェイ)という2つの事業者がサービスを行っているのみになります。
楽天アンリミットは楽天エリアでは通信容量無制限、電話かけ放題(楽天LINK使用時)ですが、楽天エリアはまだまだ都市部のみに限定され、地方都市や山村部では使えないのが実情です。
IIJは非常に格安の通信ができる事業者ですが、通信速度は目も当てられないほど遅いのが特徴で、通信容量も決して多くありません。
YouTubeでの動画再生には耐えられないと思った方がいいでしょう。
デメリット4 eSIMに対応しているスマートフォンはまだまだ少ない
eSIMによる通信会社の認証は、すべてのスマートフォンで使えるわけではなく、eSIM対応スマートフォンのみでしか使えません。
そのeSIM対応スマートフォンですが、まだまだ数が少ないのが現状です。
Apple社の出しているiPhoneは早くからeSIMに対応しており、Xシリーズ、11シリーズ、SE第二世代、12シリーズがeSIM対応になっています。
他にはGoogle社のPixel4シリーズ、楽天公式のRakuten BIGという機種がeSIM対応になっています。
しかし日本のメーカーが出しているXperia、AQUOS Phone、ARROWSなどは全く対応していません。
詳しくは各社の対応機種一覧をご覧ください。
eSIMはこんな人におすすめ
eSIMのメリットはなんといっても、通信の使い分けをすることで自分好みの通信環境を整えることができることにあります。
以下のような用途の人にはオススメできます。
こんな人にオススメ
- iPhoneで電話のための回線とデータ通信のための回線を分けて使いたい
- 2つの通信会社の電話を1台のiPhoneで使いたい
iPhoneに限定した理由は、Androidならば別にeSIMを使わなくてもいいからです。
実は日本ではあまり知られていませんが、物理SIMを2枚挿しできるスマートフォンも販売されています。
以前私がOCNモバイルで購入したRedmi Note 9Sもその1つです。
>>Redmi Note 9SにRakutenのSIMとOCNのSIMを挿してみた話はこちら
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【テザリング検証】Redmi Note 9sにChat W-Fi・Rakutenモバイル・OCNモバイルONEを挿してテザリングしてみた
続きを見る
こうした端末であれば物理SIMを2枚契約するだけで、幅広い選択肢から好みの会社を選んで使うことができるんです。
しかし日本でのシェア1位を獲得しているiPhoneに関しては、2枚の物理SIMカードを挿すことはできません。
なので日本のiPhoneで2つの通信会社をまとめて使う場合にはeSIMを使うしかありません。(『日本のiPhone』と書いたのは香港版のiPhoneならば物理SIMを2枚挿しできるから)
eSIMはこんな人におすすめしない
結論から言えば、eSIMの利用は「めんどくさいのは嫌」という人には向いていません。
eSIMの取扱いは、物理SIMと比べれば決してシンプルではありません。
物理SIMには不要な設定が必要だったり、使用できる機種が限定されること、選べる事業者が少しマイナーなことを考えると、手を出せる人は少ないのが実際のところでしょう。
eSIMはいわゆる「スマホオタク」と呼ばれる方々には浸透してきていますが、一般ユーザーにはまだまだ縁遠い存在と言わざるを得ません。
実際に、電話と通信の回線を分けたり、2回線の電話を受話できるようにしたい人はAndroidで使っている人がほとんどです。
どうしてもiPhoneで上記の用途を使いたい人以外はあえてeSIMを選ぶ理由はないと思われます。
結論:eSIMは現状では多くの人にとって縁はない。今後の展開に期待。
ここまでの話をまとめると、eSIMをあえて選ぶのは、かなりニッチな使い方をする人だけだとご理解いただけたと思います。
現状のスマホの利用法に特に不満がない人にとっては、まったく縁がないといっても過言ではありません。
しかし今後eSIMの事業が拡大していくにつれて、eSIM対応スマートフォンが増えたり、eSIMを提供する通信事業者が増えたりしてくると、状況も変わってくると思われます。
しかしeSIMにできて物理SIMにできないことがあまり多くないことを鑑みれば、残念ながら核心的な「生活改善」にはつながらないと、個人的には考えています。
今後の続報が待たれますが、「生活を便利にできそう」「何かが簡単になりそう」と感じたらまた記事にしたいと思います。
また是非読んでいただけたら嬉しいです。
ここまでお読みいただきありがとうございました。