みなさんこんにちは、でくです!
私がnoteで連載している「世界一面白い生物学」シリーズの第2講の記事「細胞の中身は超精密機械!」の転載です
高校で生物教師をしていた経験を生かして、高校生物をベースに生物学の面白さを愛情たっぷりに書き上げています
現役の高校生はもちろん、大人の学び直しにも最適ですので、ぜひお楽しみください
今回のテーマは細胞
今回は細胞について書いていこうと思います。
皆さんは細胞と聞くとどんなイメージを持ちますか?
なんか四角い箱の中に大きな丸い核が入っていて、その周りに細胞質があって、それを細胞膜が囲んでいるっていうものをイメージする人が多いんじゃないでしょうか?
そして多くの人が思ったはずです。
「で?」
細胞は、生物の条件にもなっている大事な要素だし、当然わたしの体も、あなたの体も細胞が集まってできているわけです。
なのに、多くの人が自分の元になっている細胞に興味が持てないわけです。
それはなぜなんでしょうか?
私が考えるに、それはただただ細胞の中身を暗記させられてきたからだと思っています。
私は「細胞は超精密機械」だと思っていて、内部のはたらきはまさに複雑怪奇で理路整然、未知の世界が広がっているわけです!
そびはたらきにはとっても面白いストーリーが隠されて、それを知らずして細胞の中身を丸暗記しちゃいかんと思っています。
今回はそんな細胞について、皆さんに魅力が届けられるようお話をしていきたいと思います!
細胞って多種多様!
細胞が集まり組織となり、組織があつまり器官となる。
これも中学校で習う内容なわけです。
それってつまり、私たちの皮膚や髪の毛、目や鼻、内臓に至るまで、あらゆるものは細胞からできていて
それだけいろいろな器官があるのは、いろいろな働きをする細胞があるからってことなんですよ。
目では細胞は光を受け取る能力を覚醒させていて、胃では食べ物を消化する能力を覚醒させているわけです。
よく考えれば分かる事なんですが、それって同じ形、同じ性質の細胞じゃないですよね?
だから、器官の数だけ、組織の数だけ、色々な細胞があるってことなんですよ。中身もそれぞれ全然違います!
だから、学校で習うようなあんな四角い箱に核が入った典型的な細胞なんて、この世にほとんどないわけです。
そんな細胞の多様性についてもお話していくと面白いのですが、今回は細胞がどういう構造をしていて、どんなふうに仕事をしているのかをお話したいので、またの機会にしますね。
それでは、多様性の裏で細胞はどんな働きをしているのかみていきましょう!
細胞という部屋の中にある、小さな部屋たち
「細胞の中には核がある」中学生でも知っていることですが、核とはそもそもなんでしょうか?
体を作る情報である「遺伝情報」。これを担っているのはDNAという物質で、名前は皆さんもよく知るところですよね。
このDNAの中に刻まれている情報をもとに、色々な生命活動をしていくわけなのですが、そのためにはDNA専用の部屋があったほうが都合がよかったわけですね。核はそのための部屋になっているわけです。
実は細胞の中には、核と同じように色々な働きをするための部屋が存在します。
それを私たちは「細胞小器官」と呼んでいます。
例えば植物などは光を使って栄養分を作る「光合成」をするんですが、そのためには光合成をするための部屋が役立っています。これを葉緑体といいます。
他にも、私たちの筋肉などのようにエネルギーをたっくさん必要とする細胞には、エネルギーを作り出すための部屋である「ミトコンドリア」が多く配置されています。
実は生物は、細胞のはたらきに応じて、そのはたらきに特化した部屋を設けることで、細胞の中で仕事が「混線」しないようにしています。
例えば大きな企業の中で、経理や人事、総務、広報などの部署の区分けがなくて、しっちゃかめっちゃかに人が動いていたら、仕事の効率が悪いですよね?
(最近はそういった定位置を決めない企業も増えていますが、実は同じようにあえて部屋を設けないでいる細胞もあったりします。それはまた今度の機会に)
仕事を効率的にこなすためには、仕事ごとに部屋を決めてその中で特化した仕事をがっつりやってもらうのが一番なわけですね。
部屋の中では「酵素」と呼ばれる労働者が休むことなく働いていて、物質を作り替えたり、壊したり、くっつけたり、ため込んだり、いろいろなことをしています。
そうした働きのおかげで、それぞれの部屋はもはや【専門業者】のような働きをしているようにも見えます。
細胞小器官は、細胞の中でそれぞれの仕事を専門にした業者なので、すなわち小さな器官というところから名前がつけられたんですね。
で、ミトコンドリアや葉緑体の他にも、ユニークな働きをする細胞小器官があります。
例えば、私たちの体をつくっている筋肉や臓器、皮膚などはタンパク質でできているんですが、そんなタンパク質を合成する細胞小器官は「リボソーム」といいます。さしずめ【タンパク質の製造業者】とでもいいましょうか。
そして作られたものを細胞の適切な場所に運搬したり、細胞の外に放出したりする細胞小器官は「ゴルジ体」といいます。つまり【タンパク質の宅配業者】ですね。
リボソームからゴルジ体まで、安全にかつ確実に運ぶためには「小胞体」という細胞小器官を使います。【タンパク質の運搬業者】ですね。
中学校でもおなじみ、植物の中で発達している「液胞」も細胞小器官です。液胞は、細胞の中の不要物をため込んで分解もする【ごみ処理業者】なんですよ。
動物の細胞の中では液胞は発達していませんから、【ごみ処理業者】を別に用意しないといけません。動物では「リソソーム」という細胞小器官が活躍します。
こんな感じで、細胞の中にはたっくさんの業者がひしめいていて、仕事を分担して活動しているわけですね!
どうです? ワクワクしてきませんか?
タンパク質って超大切!
いまの話の中でお気づきになった人も多いんじゃないですか?
「タンパク質に関わる業者、多くね」
そうなんです! タンパク質という体をつくる基本パーツを扱う細胞小器官が、実にたくさんあるんですよ。
例えば髪の毛の細胞は、ケラチンというタンパク質をたくさん製造しています。髪を大切にしている人はきっと聞いたことがあるんじゃないでしょうか?
ドライヤーやヘアアイロンでケラチンが痛まないようにすることで、キューティクルなどがキレイに維持されるですが、そのケラチンですよ。
他にも、唾液の中や胃液の中には消化酵素である「アミラーゼ」や「ペプシン」などが入っています。酵素はタンパク質でできている道具です。
消化酵素は食べ物を消化するための専門の道具です。これも唾液を作る場所や胃液を作る場所でせっせと作っています。
皮膚にハリをもたらすコラーゲンは皮膚で作られますが、皮膚以外にも間接の軟骨で活躍しています。
血液の中にある赤血球では、体中に酸素を運ぶためのヘモグロビンというタンパク質が入っています。これも赤血球を作る過程で合成されていきます。
こんな具合に、私たちの体の中では、必要なところで必要なタンパク質がつくられ、そして利用されます。
生きるということはすなわちタンパク質を使うということなんですね。
それだけ生物にとってタンパク質は大切なものなので、わざわざ専門の業者を色々用意するほどコストをかけるわけです。
細胞小器官は互いに連携しあって仕事をこなす
私たちが社会で働くためには、異なる部署や業者と連携して一つの仕事をなすことが多々あります。
それは細胞の中でも同じで、タンパク質を作って、使えるようにするまでには、多くの細胞小器官が連携して行っています。
まずタンパク質を最初に作るのは「リボソーム」です。
タンパク質の作り方を示す設計図は核の中のDNAです。
リボソームは核内のDNAからタンパク質の設計情報をもらうことで、せっせとタンパク質を作っていきます。
作ったタンパク質が細胞の中でフワフワと散ってしまうのは困ります。なので「リボソーム」は運搬業者である「小胞体」とくっついていて、タンパク質を作ったそばから小胞体の中に送り込んでいきます。
そうして作り立てホヤホヤのタンパク質を受け取った「小胞体」は、タンパク質の配送業者である「ゴルジ体」にタンパク質を正確に届けます。
輸送される途中で、作られたタンパク質が『どこに』運ばれなければならないのか、荷札のようなものを取り付けます。
例えばヘモグロビンは細胞の中で働くタンパク質ですが、消化酵素やケラチンなどのように細胞の外ではたらくものもあるわけです。
細胞の中なのか、外なのか。
細胞の中だとしたらどこに運ぶのか。
それを正確にゴルジ体にわかってもらうための荷札なんですね。
そうして荷札とともにタンパク質を受けとった「ゴルジ体」は、最初に梱包作業をします。
タンパク質を一つ一つ運ぶととっても大変です。タンパク質はすごいスピードでリボソームから製造されてきますから、何千何万というタンパク質を正確に配送するため、【配送用の袋】に詰め込んでいくんですね。
その【配送用の袋】を「輸送小胞」というんですが、それにつつまれたタンパク質はゴルジ体から、各々の目的地へと配送されていきます。
配送とひとことで言うのは簡単ですが、細胞内はいろんな物質がごちゃごちゃ入り混じってて液体が渦巻いている状態のなので、正確に目的地にたどり着くのはとても大変です。
ましてや配送ドライバーのように、目的地を目指していける人間がいるわけではないのですから。
それでも「輸送小胞」は迷うことなく、目的の場所へと運ばれていきます。
それは、「ゴルジ体」で『どこに運ぶのか』という配送伝票をしっかりと貼り付けているからなんですね。細胞の中の輸送の仕組みはまだまだ分かっていないことも多いのですが、ゴルジ体のこうした働きによって、きちんと正しく配送されていくことがわかってきています。
そうして「輸送小胞」は目的地に到達します。目的地とは細胞内であれば他の細胞小器官ですし、細胞外であれば細胞膜です。細胞膜に到着し輸送小胞は細胞膜と『融合』して、その結果中身が細胞の外に放り出されます。面白いでしょう?
様々な細胞がそれぞれの仕事をするために必要なタンパク質がきちんと作られて使われていくためには、こうした働きが連携して行われているわけです。
そして驚くべきは、それは細胞という数ミクロン(1000分の1mm)というサイズの中で、人同士のようなコミュニケーションなしにもかかわらず、整然と正確に、年中無休で行われていることです。
私たち人間ですら、連絡をまめにとることでどうにか仕事ができているわけで、時には意思疎通がうまくいかずに仕事が難航する場面があります。
ですが細胞の中ではそうした音声や言語といったコミュニケーションツールなしに、まるで自分の仕事を自覚した業者が本当にいるかのごとく、仕事を連携しながら進行させていきます。
これは本当に感動的ですよね~!
細胞のはたらきは神秘的
いかがだったでしょうか?
細胞は精密機械!というのがわかってもらえたでしょうか?
ヒトの細胞の数は60兆個ともいわれていますから、こんな精密な機械が私たちの中に60兆個もあるわけです。
それらが体の各場所で髪の毛の細胞になったり、皮膚の細胞になったり、内臓の細胞になって、それらの目的に合ったタンパク質を作ることで機能しているわけです。
これって本当にすごいことですよね。当然細胞一つ一つには意思なんてないわけで、細胞の持ち主である私たちの意思とは無関係に全部自動で起きているんです。
まだまだ細胞のはたらきについては分からないことも多いです。それもまたロマンをくすぐりますよね~。
今回は説明の都合上省いてしまったものも多いのですが、今後のnoteでさらに細かいことにも言及していこうと思いますので、また読んでくださったらうれしいです。
ここまで読んでいただきありがとうございました。