生物基礎の授業で「発酵食品」について学びました。
発酵食品を挙げていくゲームは白熱しましたが、その仕組みについて深く語ることはできませんでしたので、通信という形で少し触れてみたいと思います。
世界中の様々な地域で様々な文化が発展していますが、それぞれに発酵という現象が根付いています。特に日本という国は、発酵を扱わせたら世界随一の実力を誇る国です。丁寧で根気強い民族性も相まって、発酵に使う微生物の選別・改良・管理に関しては世界トップクラスの技術を誇りますし、発酵食品の多彩さも目を見張るものがあります。
2002年には甘味・苦味・酸味・辛味とは異なる第5の味覚として「旨味(UMAMIは世界共通語)」が認定されましたが、その発見には味噌や鰹節といった日本伝統の発酵食品が大きく貢献しています。味噌や醤油は旨味物質であるグルタミン酸を豊富に含みますからね。
ここでは、発酵食品がなぜおいしく、体にいいのかという点についてもう少し詳しくお話していきましょう。
「料理のさしすせそ」と呼ばれる調味料は知っていますか?そのうち「す・せ・そ」にあたるお酢・醤油・味噌は発酵食品です。日本食の味付けには欠かせない調味料たちですね。
製造の過程で大量に塩分を投入するため、醤油や味噌は高塩分で体に悪いと言われますが、実はそれ単体としてではなく日本食全体の栄養として考えると健康的な調味料と言えます。
醤油や味噌といった大豆を発酵させた食品には、旨味成分の王様であるグルタミン酸が大量に含まれています。旨味成分にはグルタミン酸の他にもイノシン酸やグアニル酸といった物質があります。ちなみにすべて日本人の発見です。
そういった旨味成分は相乗効果を持っていることが明らかになっていて、グルタミン酸はイノシン酸と併せて食すと旨味を増強することができ、少ない量で旨味を得ることができます。つまり、味噌や醤油単体で使うよりも他の旨味成分と併せることで少ない量で味付けを完了できるということですね。
イノシン酸は鰹節に、グアニル酸はシイタケに含まれていますので、味噌汁やお鍋のように出汁を合わせることで作られる日本食は、結果的に塩分をセーブしながら味付けをしているわけです。そう考えると、なんと素晴らしい伝統食なのだろうと思いませんか?
大豆発酵食品は基本的に風味に乏しいタンパク質を、微生物の力を借りてアミノ酸まで分解することで芳醇な味わいを作り出しています。
大豆は「畑の肉」といわれるほど高タンパクな食品ですが、大豆のタンパク質は繊維質で消化に悪い食品ためそのままでは供されません。
しかし、麹カビや酵母の力を借りて発酵させることで、繊維質のタンパク質を分解して消化しやすい(というよりもはや消化された状態)アミノ酸にすることができます。
発酵は「酸素を使わずに有機物を分解すること」と学習しましたが、炭水化物であるグルコース以外にもタンパク質も分解しているんですね。卵の白味に味がないことからも分かる通りタンパク質は基本的に無味です。
そんなタンパク質を発酵することで生じるアミノ酸は味覚成分です。アミノ酸は舌で味覚として認識されるため、アミノ酸が多いと芳醇で味わい深く感じます。大豆単体ではおいしくなくても、納豆や醤油、味噌、お酒になった途端味わいが強くなる理由がここにあります。
さらに、発酵の過程ではCO2やH2Oにまで分解されなかった「中途半端に分解された物質」がたくさん生成されますが、それらは私たち人間にとっては「栄養」になり健康の一助となります。
タンパク質の消化を良くしておいしくするだけでなく、様々な栄養物質に変えてくれるとは至れり尽くせりですね。
私たちのご先祖様たちはそんな発酵のもつ力に目を付け、生きるための知恵として長年大事にしてきたわけです。
発酵現象は近年研究対象として注目度を高めています。そんな「発酵を科学する」ことに興味のある人は、「日本の伝統 発酵の科学」(中島春紫 著)というブルーバックスから出ている本がオススメです。ぜひ読書の時間の候補にしてみてください。
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【内容要約】日本の伝統 発酵の科学 微生物が生み出す「旨さ」の秘密 (ブルーバックス)【感想書評レビュー】
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