総合的な探究の時間が教育課程に盛り込まれました。
探究の時間に生徒に伝えているオリエンテーションガイダンスの内容をまとめてみました。
探究活動で一番重要なことは、仮説検証を行うプロセス
探究活動において一番重要なことは何だろうか?
何かを調べて発表することだろうか? 研究してデータを採取することだろうか?
どちらも重要ではあるが、最重要ではない。
探究活動で一番重要なのは、自分の頭で考えて「仮説」を立て、それが正しいかどうか検証するプロセス自体だ。
大人になって仕事をしていくとき、君たちの目の前にはあらゆる問題が立ちはだかる。マニュアルを見ても分からない、誰かに聞いても分からない、調べてみても分からない、そんな問題にぶつかる。そのとき、「分からない」といって逃げてしまうのか、あるいは果敢に取り組んでいけるかは、その人の社会人・大人としての評価に直結する。
逃げてしまう人と挑戦できる人の差の一つは、自力で課題を解決したという経験値の差だ。
探究活動は、その課題解決の経験値をためることに他ならない。研究活動を仕事にするかどうかは関係ない。課題解決のプロセスを身に着けて、生活のあらゆることに応用できるようになれれば、どんなに難しい問題にぶつかっても何も恐れることはないのだ。
探究活動の進め方
①疑問をもつ 調べ学習や読書などなどを通して、問題を発見する。
②仮説を立てる 問題に対して、「こういうことがあるのではないか」と仮説をつくる
③仮説を検証する 仮説を支持する情報、否定する情報を収集して検証していく
④結論・発表 仮説が正しかったか、間違っていたかの結論をだして発表をする。
⑤次の疑問を探す 得られた結論をもとに、新たなに疑問をもつ
(もちろん全く違うジャンルの問でも構わない)
疑問と仮説は違う?
疑問は「○○とは何か?」「なぜ○○は●●なのか?」というもの。疑問を解消するために、自分なりの「理由」をもって断定して作ったものが仮説で 「○○は●●である」という形式になる。
例えば、「紅葉とはなにか?」「なぜモミジは秋に紅葉するのか?」というのは疑問で
それを元に立てた「紅葉とは葉から葉緑体がなくなることである」が仮説となる。
仮説を立てるには根拠をもって考える必要がある。モミジは夏までは緑色をしている→葉が緑色なのは葉緑体があるから→紅葉は葉の色が赤や黄色になること→葉を緑色にしている葉緑体がなくなる、という具合。
実は研究においては一番大変なことは「適切な仮説を立てること」にある。仮説が立てられてしまえばあとは研究するだけなので行動に移れる。行動に移るまでが一番大変なのだ。
探究活動において重要なのは仮説検証のプロセスであって結論ではない
正しい(立証できる)仮説を立てることは重要ではない。立てた仮説が誤っていることは何ら恥ずかしいことではないし、正しい仮説を作ったから偉いなんていうことはない。重要なのはその仮説が正しいか誤っているかを説明できるだけの根拠を示すことにある。
実際の学術研究においては、調べても分からないから仮説を立てて、自ら調査研究を行って正しいのか誤っているのかを検証するという流れになる。
探究活動の目的は「未知」を発見することではない。未知を発見するのは大学や研究機関における研究活動であって、探究活動はそのプロセスに価値を見出している。
もちろん、その過程の中で未知の発見にまでこぎつけたのであればそれは素晴らしいことだ。
学校の実態や、取り組むことができる期間の長さによっては、仮設を検証することができるほどのデータを取るということは難しいかもしれない。
そのようなときは、無理して研究という形にとらわれずに、調べ学習まとめ発表という形式をとっても、有意義な経験を積むことができる。
疑問から仮説を立て、それを検証する調べ学習をして結果をまとめるという方法でも、課題解決のプロセスを学ぶことができる。
オマケコラム 否定を否定する方が証明は楽
科学研究の場においては「○○は●●でない」という検証したい仮説とは逆の説を立てて、それを否定するデータを集めることで、「○○は●●である」という仮説を支持するというテクニックを使うことが多い。このとき「○○は●●でない」という仮説を、否定する前提の仮説ということで『帰無仮説』という。この論理展開は、背理法によって逆命題の矛盾を導く証明法と近いものがある。